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ACC・ProjectWise・Trimble Connect — BIM共通環境、結局どれを選ぶか

BIM運用の中核となるCDE(共通データ環境)の主要3製品、Autodesk Construction Cloud、Bentley ProjectWise、Trimble Connectを価格・機能・国内採用実績・統合性などの観点から客観的に比較し、案件規模や組織別の選定指針までを整理します。

#CDE #比較 #共通データ環境
目次(25)

なぜいまCDEがBIM運用の中核なのか

BIMの本格運用が進むにつれ、設計・施工・発注者・サブコンの間で扱う3Dモデル、図面、属性データ、RFI、承認履歴といった情報量は爆発的に増えています。これらの情報を「最新版はどれか」「誰が承認したのか」を曖昧にしたまま運用すれば、手戻りや責任の所在の不明確化を招き、BIMの効果はかえって低下します。

そこで国際規格ISO 19650が示すのが、CDE(Common Data Environment/共通データ環境)の考え方です。CDEとは「プロジェクトチーム全体のドキュメント、グラフィカルモデル、非グラフィカルデータを収集、管理、配布するために使用される単一の情報源」と定義され、Work in Progress、Shared、Published、Archivedといったステータス管理を通じて、情報の正しさと追跡可能性を担保します(参照:JACIC ISO 19650の全体像BuildApp News ISO19650解説)。

国内でも国土交通省BIM/CIM原則化の流れの中で、ISO 19650準拠の情報共有体制が求められはじめており、CDE製品の選定はBIM運用設計そのものを左右する重要な意思決定になっています。本記事では、現場で採用されることの多い3製品、Autodesk Construction Cloud(ACC)、Bentley ProjectWise、Trimble Connectを、公開情報をもとに客観的に比較します。

比較する3製品の概要

Autodesk Construction Cloud(ACC)

ACCは、Autodeskが提供する建設業界向け統合プラットフォームで、設計から施工、引渡し、運用までを単一のデータ環境でつなぐことを目的としています。CDEとしての中核はAutodesk Docs(ファイル管理、図面・モデルレビュー、承認)で、その上にBIM Collaborate / BIM Collaborate Pro(モデル統合・干渉チェック・課題管理・Revit等のクラウド共同編集)、Autodesk Build(RFI、提出物、検査、コスト管理など現場・施工管理)、Autodesk Takeoff(数量算出)などが組み合わさる構造です(参照:Autodesk公式 ACC日本サイトArchitosh ACC/Forma解説)。

なお2026年3月にはACCの構成製品が「Autodesk Forma」ブランドに統合される動きが公表されていますが、Docs、BIM Collaborate、Build等の機能は従来通り提供されると説明されています。本記事では現時点で広く通用しているACC名称で表記します。

Bentley ProjectWise

ProjectWiseはBentley Systemsが長年提供してきたエンジニアリング情報管理基盤で、土木・大型インフラ案件を中心に世界中で採用されています。設計データ、図面、モデル、変更履歴、レビュー、納品物(Deliverables)を一元管理し、BS 1192/PAS 1192/ISO 19650に準拠したワークフローを構築できる点が大きな特徴です(参照:Bentley公式 ProjectWiseBentley BCDE)。

近年はBentley Infrastructure Cloud(iTwin基盤)の中核として、SYNCHRO(4D施工計画)、AssetWise(資産管理)と連携し、デジタルツインの基盤としても位置付けられています(参照:Business Wire Bentley Infrastructure Cloud)。

Trimble Connect

Trimble Connectは、Trimble(Tekla等の親会社)が提供するクラウド型コラボレーションプラットフォームです。無償プランがあることが大きな特徴で、1プロジェクト・5メンバー招待・10GBストレージまで利用できます。有償のBusinessプランやBusiness Premiumプランでは、プロジェクト数・メンバー数・ストレージを拡張でき、3DモデルビューワーやIFC等の多形式対応、モバイル/AR連携などが強化されます(参照:Tekla公式 Trimble ConnectTrimble Connect解説記事)。

施工BIMの文脈では、Tekla Structuresとの密接な統合、Trimble XR10やHoloLensと連動するTrimble Connect MR/ARによる現場での3D活用が、鉄骨ファブリケーターや専門工事業者から評価されています(参照:ニコン・トリンブル Trimble Connect MR)。

主要比較表

比較軸Autodesk Construction Cloud (ACC)Bentley ProjectWiseTrimble Connect
主要ターゲット建築(ビル・住宅・医療等)/ゼネコン・設計事務所土木・大型インフラ(道路・橋梁・鉄道・上下水・エネルギー)鉄骨・施工BIM/専門工事/中小規模を含む幅広い領域
CDE中核機能Autodesk Docs(旧名)/Forma Data ManagementProjectWise/BCDETrimble Connect本体
標準準拠ISO 19650対応のテンプレート・運用ガイドありISO 19650/BS 1192/PAS 1192準拠ワークフローISO 19650準拠の運用は構成次第(標準テンプレートは限定的)
価格モデルサブスクリプション(年・月)、製品別+ユーザー別。Pro版は共同編集対応エンタープライズ契約中心、案件・組織単位の見積無償プランあり/Business 月額9.99〜12.99 USD/ユーザー/Premium 月額23.95 USD/ユーザー目安
容量・ユーザープランにより異なるが基本「ユーザー課金+プロジェクト容量」エンタープライズ向けにスケール、容量設計の自由度が高い無償10GB/有償は無制限プロジェクト・メンバー
Revit/Navisworks連携ネイティブ統合、最も滑らかなワークフローコネクタ経由で連携可能、Bentley系(OpenBuildings等)が最適IFC等の中立形式中心、Revit連携はアドインで対応
IFC/中立形式対応(ただしAutodesk系最適)対応(土木向けOpenIFCも整備)IFCを軸にしたベンダーニュートラルな運用が得意
モバイル/オフラインiOS・Android、現場での図面・モデル閲覧・指摘に強いモバイル対応あり、オフライン同期に強みiOS・Android、AR/MR連携が豊富
国内日本語サポート日本法人+多数のパートナー(大塚商会、SB C&S等)ベントレー・システムズ日本法人およびパートナーニコン・トリンブル等を通じた国内サポート
代表的な国内採用清水建設(Shimz One BIM)、阪急阪神不動産(発注者ACC採用)など国交省関連の土木プロジェクト等での採用報告鉄骨ファブリケーター・施工BIM現場での採用が中心

※価格・プランは2026年6月時点で公開されている情報をもとにした目安であり、実際の契約条件は代理店・案件規模により変動します。最新情報は各社公式を確認してください。

案件規模・組織別の選定指針

大規模ビル・複合建築のゼネコン/設計事務所

Revit/Navisworksを中心に設計・統合を進めるプロジェクトでは、ACCが第一候補になるケースが多いといえます。BIM Collaborate ProによるRevitクラウド共同編集は、複数拠点・複数社で同一モデルを編集する際の生産性を大きく左右する機能で、これに匹敵する選択肢は限られます。清水建設の「Shimz One BIM」基盤としての採用や、阪急阪神不動産が発注者の立場でACCを採用した事例は、建築領域でのデファクト化が進みつつあることを示しています(参照:株式会社キャパ 清水建設ACC解説ITmedia 阪急阪神不動産ACC採用)。

土木・大型インフラ/コンサル+ゼネコンJV

橋梁・道路・トンネル・上下水・エネルギーといった土木分野や、官庁案件で長期にわたるデータの正当性・追跡性が問われるプロジェクトでは、ProjectWiseの強みが活きます。世代管理・監査ログ・電子納品・サプライチェーン全体での承認といった機能は、エンジニアリング会社が培ってきた要求仕様に応える形で発展してきた背景があります。OpenBuildings、OpenRoads等のBentley系オーサリングツールとの統合が前提の案件では特に親和性が高く、SYNCHRO(4D)やiTwinと組み合わせたデジタルツイン運用へも拡張しやすい構成です。

鉄骨ファブ・専門工事・中小規模プロジェクト

Teklaを軸に鉄骨や設備の施工BIMを進めるチーム、あるいは「まずはCDEを試したい」中小規模の事業者には、Trimble Connectが現実的な選択肢になります。無償プランで小規模PoCを開始できる点は、いきなり数百ライセンスを契約しづらい組織にとって大きな利点です。さらに、Trimble XR10やHoloLensを使った現場でのMR/AR検査ワークフローは、施工段階のBIM活用を一段引き上げる手段として注目されています。

発注者・PM/CMの立場

発注者が複数の設計・施工チームを横串で管理する場合、選定基準は「自社が長期に渡って情報資産を保持できるか」「運用引継ぎが可能か」に重きが移ります。ACCやProjectWiseは長期データ保管・アーカイブ機能が充実しており、引渡し後のFM・運用フェーズへの連携を見据えるなら有力候補です。

CDE導入で押さえておくべき注意点

1. ツール選定の前に「運用ルール」を決める

ISO 19650は大きな考え方を示すのみで、具体的な命名規則・属性定義・ステータス遷移は各組織で設計する必要があります(参照:国土技術政策総合研究所 情報共有システムの活用)。製品選定だけ先行してルールが未整備だと、結局「ただのクラウドストレージ」化してしまいがちです。

2. WIP/Shared/Published/Archivedの遷移を可視化する

CDEの効果は、Work in Progress(作業中)からShared(共有)、Published(承認済)、Archived(保管)へのステータス遷移を厳密に運用してこそ発揮されます。各製品のワークフロー機能・承認機能を、自社のISO 19650ベースの運用ルールに合わせて設計することが重要です(参照:BuildApp News CDEの重要性)。

3. 既存のオーサリングツールとの相性を冷静に評価する

「Revitが社内標準ならACC」「Bentley系が中心ならProjectWise」「Teklaや多様な専門工事が混在するならTrimble Connect」というのは大枠の指針として有効ですが、実際にはRevit+Tekla+IFC、といった混在パターンがほとんどです。IFCを軸にどこまでベンダーニュートラルな運用を許容するかを事前に整理しておきましょう。

4. 価格は「ユーザー単価×人数×期間」だけでなく、運用コストも見る

CDEのTCO(総保有コスト)には、ライセンス費用に加え、初期セットアップ、テンプレート整備、教育、運用管理者の人件費、外部チームへの招待ライセンス費が含まれます。無償プランから始められるTrimble Connectでも、本格運用ではBusiness/Premium契約や、専任管理者の工数が必要になります。

5. データ主権・セキュリティ要件を発注者の観点でも確認する

公共案件や大手発注者案件では、データ保存リージョン、アクセスログ、SSO/IDP連携、退職者のアクセス遮断、外部監査対応といったセキュリティ要件が契約条件に含まれることがあります。エンタープライズ向けの権限管理・監査機能はACCとProjectWiseが充実しており、Trimble ConnectでもBusiness以上で対応が広がります。

FAQ

Q1. CDEとオンラインストレージ(SharePointやBoxなど)は何が違うのですか?

汎用クラウドストレージは「ファイルを置く場所」を提供しますが、CDEはISO 19650が定めるステータス管理、承認ワークフロー、変更履歴、納品物管理、図面・モデル単位のレビュー、課題管理までを統合的に提供します。BIMモデル特有の干渉チェックやビューワー、属性情報の参照などはCDEの専用機能でこそ実現できます。

Q2. 3製品を併用することはありますか?

実務では珍しくありません。たとえばゼネコン全体としてはACCを情報共有基盤に据えつつ、鉄骨ファブ側がTekla+Trimble Connectで詳細モデルを管理し、IFCで連携する、といったハイブリッド運用が見られます。土木JVではProjectWiseを軸に、特定の建築工区だけACCで運用するケースもあります。

Q3. 国土交通省のBIM/CIM原則化にはどの製品が必須ですか?

国交省は特定製品を指定していません。ISO 19650準拠の情報共有・CDE運用が達成できれば、製品はプロジェクト要件に合わせて選定可能です。実務的には案件発注者・元請の標準環境に合わせるのが一般的です。

Q4. 価格が安いから、と無償プランで本番運用するのは無理ですか?

小規模・短期のPoCや、社内の限られたメンバーでの検証なら無償プランで十分なケースもあります。ただし、外部関係者を多数招待する、長期にわたって情報を蓄積する、ISO 19650準拠の監査ログを残す、といった要件が出てきた段階で、有償プランへの移行が現実的です。

Q5. 既存のBIM 360プロジェクトはどうなりますか?

Autodeskは旧BIM 360からACC(Autodesk Docs)への移行を進めてきました。すでに多くの機能はACC側に集約されており、新規案件は基本的にACCで始めるのが推奨されています(参照:株式会社キャパ BIM 360とACCの違い)。

まとめ

CDE選定は、単なる「ツール選び」ではなく、自社・自プロジェクトのBIM運用のあり方そのものを決める意思決定です。ざっくりとした指針として、

  • 建築・ゼネコン・設計事務所でRevit中心 → Autodesk Construction Cloud
  • 土木・インフラ・大規模長期案件 → Bentley ProjectWise
  • 施工BIM・鉄骨ファブ・中小規模/PoCから → Trimble Connect

を出発点としつつ、

  1. ISO 19650に沿った運用ルール(命名・ステータス・承認・アーカイブ)を先に決める
  2. 既存のオーサリングツール構成と中立形式(IFC)の使い方を整理する
  3. ライセンス費だけでなく、教育・運用管理・セキュリティ要件まで含めて評価する
  4. 必要に応じて複数製品の併用も視野に入れる

というプロセスを踏むことで、CDEは「単なるファイル置き場」から「プロジェクトの単一情報源」へと進化します。BIM運用の中核を選ぶ作業は、組織のデジタル変革の方向性を定める作業そのものといえるでしょう。

参考・出典

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