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建築AI

施工現場のAI活用|画像認識による安全管理・進捗把握の最新事例

「建設現場の安全と進捗を、AIの目で支える」——大手ゼネコンを中心に、こうした取り組みが実際に現場へ入りつつあります。背景には、人手不足と2024年問題、そして国土交通省が掲げる「i-Construction 2.0」のオートメーション化方針があります。この記事では、施工現場での画像認識AI活用について、各社の実例と国の動きを整理します。

建設現場の「目」をAIに

建設現場には、安全管理・進捗管理・品質管理といった、多くの「見て確認する」業務があります。誰がどこで作業しているか、ヘルメットや安全帯を正しく装着しているか、各工種がどこまで進んでいるか——人の目で巡回・点検する仕事は、現場の必須業務でありつつ、相当な時間を費やしています。

人手が限られるなか、これらを画像認識AIで自動化・支援する流れが本格化しています。

国の方針:i-Construction 2.0

国土交通省は2024年に「i-Construction 2.0」をとりまとめ、建設現場のオートメーション化を進めています。柱は次の3つで、**2040年度までに少なくとも省人化3割(生産性1.5倍)**を目標としています(国土交通省「i-Construction 2.0」報道発表)。

  • 施工のオートメーション化
  • データ連携のオートメーション化
  • 施工管理のオートメーション化

施工管理のオートメーション化の文脈で、画像認識AIによる安全確認・進捗把握は、現場で着実に効果が見える領域です。

安全管理:AIで何が見えるか

ヘルメット・安全装備の自動確認

固定カメラやウェアラブルカメラからの映像をAIが解析し、ヘルメット・安全帯の着用、立入禁止エリアへの侵入などを自動でチェックし、異常があればアラートを出す——という運用が広がりつつあります。

大成建設は、AIを用いた高速・高精度な安全装備確認システム「T-iSafety Protection」を開発しています(大成建設「AIを用いた高速・高精度な安全装備確認システム『T-iSafety Protection』を開発」(2021年4月))。映像からの自動判定で、安全管理の網羅性と即応性を高める取り組みです。

災害事例の解析による危険予知の支援

「過去の災害から学ぶ」ことは、現場の安全管理の基本です。鹿島建設は、自社の災害事例約5,000件と、厚生労働省が運営する「職場のあんぜんサイト」に掲載されている約64,000件の災害事例をAIで解析し、類似作業の災害事例を可視化するシステム「鹿島セーフナビ(K-SAFE)」を共同開発しました(鹿島建設「建設工事の危険予知活動にAIを導入」(2021年10月))。

自然言語処理技術で災害原因を抽出・分類し、現場で行う危険予知活動(KY活動)に「今日の作業に似た過去の事故事例」を提示する——という使い方です。現場の安全担当者の判断を、データで支える仕組みです。

進捗管理:施工状況を自動で図面化する

施工管理者が日々現場を歩き、進捗を確認して図面に書き起こす——という業務に、AIの目を入れる動きも進んでいます。

大成建設は、360度カメラで撮影した映像を画像認識AIで解析し、施工状況や資機材の保管場所を自動で図面化する「工事進捗確認システム」を、2025年1月に本格運用開始したと発表しています(大成建設「360度カメラ画像とAIを用いた『工事進捗確認システム』の本格運用開始」(2025年1月27日))。

発表によると、内装工事16工種の進捗と24種類の資機材の所在をAIが自動判別し、柱や壁に貼られた2次元コードで位置情報を自動取得します。30カ所以上の建設現場、延べ600日・1,800階を超える撮影実績を経て本格運用に移行し、**目視確認が中心だった施工管理業務で「1日1時間以上の時間削減効果」**を確認したとされています。

「見て確認する」業務の負担を、AIが具体的に肩代わりし始めている、わかりやすい事例です。

現場AI活用のポイント

導入を考えるうえで意識したい点を整理します。

「現場の手間を増やさない」設計にする

新しいシステムが、かえって現場の入力や撮影の手間を増やしては本末転倒です。固定カメラ・360度カメラ・既存のヘルメットカメラなど、現場が普段行う動作の延長で取り込める仕組みが定着しやすくなります。

効果を数字で示す

「ヒヤリハットが何件検知できたか」「巡回時間が何分減ったか」「進捗確認の工数が何時間減ったか」を測ることが、社内の納得と次の展開につながります。大成建設の事例のように「1日1時間削減」と数字で示せると、投資判断もしやすくなります。

小さく試して広げる

最初から全工種・全現場で導入するのは現実的ではありません。安全装備の自動確認、または進捗管理のどちらかひとつから、特定の現場でPoCを行い、効果を確かめてから広げるのが定石です。

個人情報・撮影ルールの整備

映像には作業員が映ります。撮影の目的・保存範囲・閲覧権限を社内で明文化し、関係者に周知することが、運用を持続させる土台になります。

中小・中堅の現場でも始められるか

ここで紹介した事例は大手ゼネコンが中心ですが、画像認識AIの活用は、中小・中堅の建設会社・工務店でも十分に検討できる領域になりつつあります。理由は3つあります。

1. ハードウェアが安価になっている

固定カメラ、360度カメラ、スマートフォンなど、現場で映像を取り込むハードウェアの選択肢は広がり、価格も下がってきました。新しい機材を一式そろえなくても、既存のスマートフォンや市販のカメラから始められるサービスも増えています。

2. クラウド型サービスが選びやすい

自社でAIモデルを開発する必要はありません。安全管理や進捗管理に特化したクラウド型サービスが提供されており、月額制で必要な機能だけ使うこともできます。導入のハードルが、以前よりずっと下がっています。

3. 補助金や支援制度が活用できる

中小企業のIT・AI導入には、国の支援制度を活用できる場面があります。中小企業庁の「デジタル化・AI導入補助金」をはじめ、用途によっては費用負担を抑えられます(BIM導入に使える補助金は?2026年版)。

「大手だから使える特別な仕組み」ではなく、中小・中堅でも十分に手が届く領域に近づいてきている——というのが、いまの画像認識AIの位置づけです。

設計と現場をつなぐ「BIM」の役割

進捗管理AIが「現場の状況を図面化する」仕組みは、BIMモデルが整っているとさらに効果を発揮します。実際の進捗とBIMモデルを重ねれば、計画と実績のズレがその場で見え、後工程の調整に活かせます。

逆に、設計が2D図面のままだと、進捗データを重ねる先がなく、AIで取り込んだ情報を活かしきれません。施工フェーズのAI活用を支えるためにも、設計段階からBIM化を進めておくことが、現場AIの効果を引き出す前提になります。

まとめ

施工現場の画像認識AIは、安全装備の自動確認、災害事例の解析による危険予知、360度カメラと連動した進捗の自動図面化など、すでに「使える技術」として現場に入っています。i-Construction 2.0が示す方向性とも噛み合い、今後さらに広がっていく領域です。

成功の鍵は、「現場の手間を増やさず、効果を数字で示し、小さく始める」こと。そして、設計から施工までをデータでつなぐ基盤——BIMの活用——を並行して進めることで、AIの恩恵は最大化されていきます。

参考・出典

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